この用語集は、犬の繁殖・販売を行う第一種動物取扱業者(ブリーダー)向けに、現場の用語と、動物愛護管理法・施行規則・飼養管理基準省令の用語を44語まとめたものです(2026年9月時点)。
このページで「法」は動物の愛護及び管理に関する法律、「規則」は同法施行規則、「基準省令」は第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令を指します。
繁殖・出産の用語
- ヒート(発情)
- 雌犬の発情期のこと。陰部の腫れや出血などで気づくことが多く、交配の時期を決める目安になります。犬は季節に関係なく発情を繰り返し、環境省の運用指針では個体により6〜10か月の間隔とされています。
- スメア(膣スメア検査)
- 膣の細胞を綿棒などで採って顕微鏡で見る検査。細胞の形の変化から発情のどの段階にあるかを推定し、交配のタイミングを判断する材料にします。検査と判断は獣医師に相談して行います。
- 交配
- 雄犬と雌犬を交尾させること。繁殖実施状況記録台帳には交配年月日(はっきりしない場合は同居を始めた日など)を記録します。
- 出産予定日
- 出産が見込まれる日。犬の妊娠期間はおよそ63日で、交配日から数える場合は幅があります。繁殖実施状況記録台帳の記載欄の一つです。出産予定日計算で目安を出せます。
- 産室
- 出産と子育てのために母犬と子犬が過ごす部屋やスペース。保温、静かさ、清潔を保ち、出産前から母犬を慣らしておきます。
- 産箱
- 産室の中に置く、母犬が出産し子犬を育てる囲い。子犬が外に出られず、母犬が出入りしやすい高さにします。
- 帝王切開
- 手術で子犬を取り出す出産方法。基準省令では獣医師が行い、出生証明書と、母体の状態・今後の繁殖の適否に関する診断書を受け取って5年間保存することが定められています(基準省令第2条第6号チ)。
- 生涯出産回数
- その雌犬が生涯で出産した回数。犬は6回までと定められています(基準省令第2条第6号ホ)。繁殖実施状況記録台帳の記載欄の一つです。
- 交配時の年齢
- 交配した日の雌犬の満年齢。犬は6歳以下が原則で、満7歳の時点で生涯出産回数が6回未満であることを証明できる場合は7歳以下まで認められます(基準省令第2条第6号ホ)。詳しくは繁殖回数・年齢の上限へ。
- 繁殖引退犬
- 繁殖に使うのをやめ、販売もしない犬。その事業者の飼養施設にいる場合は、従業員1人あたりの飼養頭数に含めません(基準省令第2条第2号)。
- 一胎子登録(JKC)
- ジャパンケネルクラブで、ひと腹の子犬を登録する手続き。2022年6月以降の交配分は、母犬の出産回数(当該登録を含めて6回以内)と交配時の年齢の条件を満たさないと申請が返却されます。
- 血統証明書
- 犬の血統(祖先)を証明する書類。JKC などの犬籍登録団体が発行します。法律で定められた書類ではありません。
子犬の世話の用語
- 日齢
- 生まれてからの日数。生まれた日を0日齢として数えます。子犬の体重記録や、56日齢の引渡し制限を確かめるときに使います。
- 新生子期
- 生まれてすぐの時期。Merck Veterinary Manual では犬と猫の新生子期を生後21日までとしています。体温調節が未熟で、状態の変化が早い時期です。
- 出生体重
- 生まれたときの体重。その後の体重の増え方を比べる基準になります。子犬の体重記録表では日齢0の欄に書きます。
- 首輪(識別用)
- 生まれたばかりの子犬を見分けるために付ける、色違いの毛糸やリボンの首輪。名前が決まるまでは「赤の子」「青の子」のように色で呼びます。成長に合わせて毎日きつさを確かめます。
- 授乳
- 母犬が子犬に母乳を与えること。飲めていない子には、人が哺乳瓶などで補助授乳をすることもあります。産室では授乳の様子を記録して共有します。
- 離乳
- 子犬の食事が、母乳から離乳食を経て固形のフードへ移っていくこと。時期や進め方は子犬の状態を見ながら、必要に応じて獣医師に相談して決めます。
- その動物の種に特有の社会行動を身につけ、家庭などの生活環境に適応した行動がとれるようになること。基準省令は、幼い犬を適切な期間、親や兄弟とともに飼養するよう定めています(基準省令第2条第7号ワ)。
- 8週齢規制(56日齢規制)
- 繁殖を行う犬猫等販売業者が、自分で繁殖した生後56日を経過しない犬猫を、販売のために引き渡したり展示したりしてはいけないというルール(法第22条の5)。天然記念物に指定された犬を繁殖する業者が一般の人に販売する場合は49日とする特例があります(法附則第2項)。
- 終生飼養
- 動物が命を終えるまで適切に飼うこと。犬猫等販売業者は、販売が難しくなった犬猫についても、やむを得ない場合を除き終生飼養の確保を図らなければなりません(法第22条の4)。
記録・帳簿の用語
- 帳簿(動物に関する帳簿)
- 動物販売業者等が備える、所有・占有する動物の記録。規則第10条の2で決まった13項目を、犬猫は1頭ごとに記載し、5年間保存します。電子データでも保存できます。詳しくは動物取扱業の帳簿の書き方へ。
- 繁殖実施状況記録台帳
- 交配日、雌雄、出産日、出産数、雌の交配時の年齢、生涯出産回数などを記録する台帳。5年間保管し(基準省令第2条第6号ハ)、他の業者に犬を譲り渡すときは写しを添えます(同号ニ)。7歳での交配の特例を使うときの証明にもなります。
- 巡回台帳
- 1日1回以上の巡回で動物の数と状態を確認した記録。5年間保管します(基準省令第2条第7号ム)。
- 清掃・消毒・保守点検の台帳
- 飼養施設の清掃、消毒、保守点検の実施状況の記録。5年間保管します(基準省令第2条第1号イ(3))。
- 健康診断書
- 1年以上続けて飼養する犬に毎年1回以上受けさせる獣医師の健康診断の結果。繁殖に使う犬は繁殖の適否の診断を含み、5年間保存します(基準省令第2条第4号ハ)。
- 定期報告(動物販売業者等定期報告届出書)
- 4月1日〜翌年3月31日に扱った動物の数を、様式第11の2で都道府県等に届け出る書類。提出は4月1日〜5月30日で、新たに所有・販売や引渡し・死亡の数は月ごとに書きます(法第21条の5第2項、規則第10条の3)。詳しくは定期報告届出書の書き方へ。
- 犬猫等健康安全計画
- 犬猫等販売業者が登録申請の際に記載する計画。幼齢の犬猫等の健康と安全を保つ体制、販売が困難になった犬猫の取扱い、幼齢の犬猫等に配慮した飼養・繁殖などの方法を書き、登録後はこれに従います(法第10条第3項、第22条の2)。
- 対面説明(事前説明)
- 犬猫などを販売する前に、事業所で購入者に現物を見せ、対面で書面や電子データを使って飼い方などの情報を伝えること(法第21条の4)。伝える情報は規則第8条の2第2項で18項目が決まっており、説明を受けたことを顧客に署名などで確認してもらいます(基準省令第2条第7号ヘ)。
- 検案書
- 獣医師が死亡した動物を調べて死因などを記した書類。死亡が多いなどの場合、都道府県知事が犬猫等販売業者に検案書や死亡診断書の提出を命じることがあります(法第22条の6)。
業種・手続きの用語
- 第一種動物取扱業
- 動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示などを業として行うこと。事業所ごとに都道府県知事(指定都市は市長)の登録を受けます(法第10条)。
- 登録の更新
- 第一種動物取扱業の登録は5年ごとに更新を受けないと効力を失います(法第13条)。
- 犬猫等販売業者
- 犬猫などの販売を業として行う第一種動物取扱業者。子犬を販売するブリーダーもこれに当たり、健康安全計画、獣医師との連携、終生飼養、56日齢規制、マイクロチップなどの追加の義務があります。
- 動物販売業者等
- 第一種動物取扱業者のうち、動物の販売・貸出し・展示などを業として行う者。帳簿と定期報告の義務の対象です(法第21条の5)。
- 動物取扱責任者
- 事業所ごとに置く、一定の資格や実務経験などの要件を満たした常勤の職員(法第22条、規則第9条)。他の職員への指導も担います。
- 飼養管理基準省令(基準省令)
- 第一種動物取扱業者が守る飼養管理の基準を定めた省令(令和3年環境省令第7号)。ケージの広さ、従業員1人あたりの頭数、繁殖の回数と年齢などの数値基準を含みます。
- 解釈と運用指針
- 環境省が示した「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」。基準省令の条文の読み方や計算方法、参考様式を説明しています。
- 常勤換算
- 非常勤の職員の週の勤務時間の合計を40時間で割り、小数点以下を切り捨てて職員数に換算する方法。従業員1人あたりの飼養頭数の上限の計算に使います(運用指針)。
- 従業員1人あたりの飼養頭数
- 飼養・保管に従事する職員1人あたりの上限は、犬20頭、そのうち繁殖に使う犬15頭(基準省令第2条第2号)。詳しくは従業員1人あたりの飼養頭数の上限へ。
- マイクロチップ
- 15桁の識別番号が記録された、皮下に埋め込む小さな電子標識器具。犬猫等販売業者は取得した犬猫(自分の犬舎で生まれた子を含む)に装着し、登録する義務があります(法第39条の2、第39条の5)。
- マイクロチップ装着証明書
- マイクロチップを装着した獣医師が発行する証明書。登録の申請に必要です。
- 登録証明書
- マイクロチップの情報を登録すると交付される証明書。オンライン申請では PDF で交付され、犬を譲り渡すときは一緒に渡す義務があります(法第39条の5第9項)。
- 変更登録
- 登録済みの犬猫を取得した人が、所有者の情報を自分に変える手続き。取得した日から30日以内に行います(法第39条の6)。販売業者は購入者にこの義務を伝えます。
- 指定登録機関
- 環境大臣が指定した、マイクロチップの登録事務を行う機関。公益社団法人日本獣医師会が指定されています。
出典
- 動物の愛護及び管理に関する法律(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-09-24)
- 動物の愛護及び管理に関する法律施行規則(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-09-24)
- 第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令(e-Gov 法令検索)(確認日 2026-09-24)
- 環境省「動物取扱業における犬猫の飼養管理基準の解釈と運用指針」(確認日 2026-09-24)
- 環境省「マイクロチップ制度Q&A」(確認日 2026-09-24)
- 一般社団法人ジャパンケネルクラブ「牝犬の生涯出産回数・交配年齢に関する規制」(確認日 2026-09-24)
- Merck Veterinary Manual「Management of the Neonate in Dogs and Cats」(確認日 2026-09-24)
本ページは一般的な情報です。手続きや解釈は、管轄の自治体(動物愛護管理センター等)にご確認ください。